埼玉県立近代美術館で「東日本大震災の記録展」 絵を通じ被災と復興

 東日本大震災直後から復興の過程を描いた「東日本大震災の記録展」が1日、県立近代美術館(さいたま市浦和区)で始まった。所沢市山口の画家、鈴木誠さん(43)が約5年にわたり被災地を30~40回訪問して描き続けた絵画111点と被災地の写真家の作品も展示されている。鈴木さんは「絵を通じて50年、100年先の人にこういうことがあったから気を付けてほしいと伝えたい」と話す。(宮野佳幸)

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 鈴木さんは大震災直後の平成23年5月から「自分しかできないことをやりたい」と被災地を訪問。被害の様子と復興の過程を油絵で描き、後世に記録を伝えようと絵筆を執ったが、当初は「ボランティアの横で絵を描くことは人の気分を害するんじゃないか」と葛藤もあった。しかし、4作目を描いている途中で、地元の人に「被災地をちゃんと見て、形として残るようにやってくれてありがとうございます」と声をかけられ、迷いは消えた。

 展示作品は今年1月までの時系列に並ぶ。黄色と淡い黄色、茶色がベースの色で、倒壊した建物など震災被害の悲惨さや、逆にその中で色鮮やかに咲く花や緑の木を通して生命の力強さなどが描かれている。

 また全ての絵に鈴木さんが地元の人から聞いた話などを盛り込んだ説明文が付いている。1番思い入れがある作品は、岩手県大船渡市三陸町越喜来のがれきの中で1本だけ立つポプラを描いた「いのちの木」。「いつまでも緑の葉を茂らせ、惨劇を語り継ぐ象徴」となることへの強い思いが込められている。次第に木の周囲のがれきが撤去され草原やコスモス畑になるなど復興の過程もわかる。

 また、「悲しいところばかりでなく、頑張っている人を撮っている人の作品を一緒に並べたい」と鈴木さんが熱望し、宮城県南三陸町の写真館「佐良スタジオ」店主、佐藤信一さんが撮影した写真60点も展示した。津波被害の写真や「地元の人だからこそ撮れる」生き生きとした住民の笑顔はじける写真が並ぶ。

 鈴木さんは「喜怒哀楽、全ての感情を受け入れて描かないと、人の気持ちに訴えられない。見た人に感じたものや記憶を将来に伝えるという気持ちになってほしい」と願いを込めた。

 6日まで。最終日を除き午前10時~午後5時半。問い合わせは鈴木さん(電)090・8008・6003。

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