あの日 そして5年(2)

「水をくむ少年」は今春、高校生になる 身長は母より2センチ高くなった…松本魁翔さん

【あの日 そして5年(2)】「水をくむ少年」は今春、高校生になる 身長は母より2センチ高くなった…松本魁翔さん
【あの日 そして5年(2)】「水をくむ少年」は今春、高校生になる 身長は母より2センチ高くなった…松本魁翔さん
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今、この手にあるものは…夢

 仮設住宅が立ち並ぶ中学校の校庭で、星の明かりを頼りにバスケットボール部の仲間たちと自主練習を始めた。5度前後の冷気の中、ダン、ダンとドリブルの音を響かせてディフェンスを振りきる。ゴールに向けて放たれたボールは、夜空に柔らかな放物線を描いたが、リングにはじかれた。

 「暗いから、なかなか入らない」。宮城県気仙沼市の鹿折(ししおり)中3年、松本魁翔(かいと)さん(15)は白い息をはきながら、はにかんだ。30分ほど体を動かした後、中学校の体育館で始まる地元クラブチームの練習に向かった。

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 今春、仙台市にあるバスケ強豪の私立高校に進学することが決まり、仮設住宅に住む母、姉、妹のもとを離れて下宿生活を始める。「ここでの楽しい時間も、あとわずかになった」。寂しさが募ってきている。

 東日本大震災では自宅が津波にのまれ、直後の数日間は高台にあった親戚宅に避難した。断水が続く中、大きな焼酎の容器を持ってがれきを歩き、近くの井戸で何度も水をくんだ。クギを踏み、足をケガしても黙って耐えた。家族が心配し、水くみに行かせてもらえなくなると思ったからだ。家族のため、とにかく何かをしたかった。

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