誤解を恐れずに言えば、「見せしめ」と「ガス抜き」の印象がある。重大事件なのに検察が不起訴にしたことが納得できない。有罪にはならなくとも、法廷に引き出すことで、多少なりとも留飲が下がる。兵庫県明石市の歩道橋事故やJR福知山線脱線事故など過去の強制起訴を見ると、その感を強くする。
▶裁判員制度とともに導入された司法制度改革である。いつもいつも「市民感覚」に諸手を挙げて賛成するつもりはないが、元会長ら東電旧経営陣の強制起訴は、福島第1原発事故を解明する大きな意味がある。検察審査会の「起訴相当」の議決を受けての再捜査で検察が起訴してもよかった。
▶はたして巨大津波は予見できたのか。未曽有の事故は防げなかったのか。まもなく5年だが、いまだにわからぬことが多い。刑事責任は別にしても、すべてを明らかにしてほしい。さらに事故後の対応で混乱をもたらしたあの人も裁きの対象にすべきだと思うが、どうだろう。