≪一人っ子政策で公権力が介入≫
人口は基礎国力だとするナショナリストは日本にもいたが中国にもいた。毛沢東である。1951年に北京大学長に就任した馬寅初(マーインチュー)が人口抑制の必要を『新人口論』で主張した。それに対し毛が「消費する口は一つだが生産する手は二つだ。人の多いことは武器である」と馬を「中国のマルサス」と批判したから、馬は悲惨だった。
毛沢東が1976年に死ぬや馬は復権され、3年後、中国は一人っ子政策に踏み切る。当時の中国は毎年オーストラリアの人口に匹敵する人間を生み出しており、抑制は絶対に必要だった。だが仕事の単位と生活の単位が重なる中国では、官庁・会社・大学などでも主任が下の者に「今度はお宅で子供を産んでもいい」などと割り当てる。堕胎を命じられる女子職員もいた。公権力が個人の出産に介入するのは人権問題だ。一人っ子政策の廃止に私もほっとした。隣国にこれ以上自己中心的な「小皇帝」がふえたらはた迷惑である。