平成の日本は少子高齢化がとまらない。世間は人口が減って国勢が衰えると懸念している。だが昭和初年は今とは逆で人口増が心配の種だった。当時は日本人の過半は農業に従事し、日本の主要輸出品は生糸で、工業製品ではなかった。狭い国土で人間が増え続けたらどうなるか。「これでもう少し人の数が少なければ日本は天国だが」と父は言った。農耕可能面積は国土の16%。「耕シテ天ニ至ル。貧シイ哉」と来日中国人が言った。この増え続ける人口のはけ口を一体どこに求めるのか。
≪間引きによる口べらし≫
明治半ばまで三千万といわれた人口は、1930年代には七千万、台湾・朝鮮を加えると一億。衛生の普及、幼児死亡率の低下で、平均寿命は40代半ばまで延びた。となると、この数の人間をどうやって食わすのか。人口増加を示す国勢調査の結果を手放しで喜べない。そんな日本人をフランス人神父が唯物論者だといった。