中国が、経済活動の基礎資源となる鋼材を格安で輸出する「たたき売り」を加速させている。国内の経済減速を輸出攻勢でカバーするためだが、それが世界の鋼材価格下落を招くなど他国経済にも悪影響を及ぼし始めている。世界のひんしゅくを買いながらも輸出を続けるのは、効率の悪い旧式設備を抱える鋼材企業の雇用を確保するため。海外からの批判をかわすため中央政府は生産能力削減の大号令をかけるが、地方政府や企業の反発は根強く、実現は難しいのが実情だ。専門家は「輸出攻勢は今後も止まらない」と懸念する。
止まらぬ輸出攻勢
中国の鋼材輸出量が急激に増えている。
中国通関統計によると、2014年は前年比50・4%増の9379万トンだったが、15年は19・9%増の1億1240万トンに急増。もはや日本の生産量を超えるほどの規模に達した。
中国の実質GDP成長率は、10年の10・6%をピークに低下傾向が続き、15年は6・9%にとどまった。特に15年は、不動産開発投資の急減速や過剰生産設備を抱える重工業分野の新規投資の落ち込みなどが国内鉄鋼需要の低迷をもたらした。
国内経済が低迷する中、急速に鋼材の輸出を増やしている格好だ。
その背景をシンクタンク「大和総研」の経済調査部主席研究員、齋藤尚登氏は「中国は国内鉄鋼需要が低迷する中、ある程度の設備稼働率を維持するため、輸出ドライブをかけている」と説明する。