米国のジャーナリスト、リップマンは1世紀近く前の1922年に刊行した著書『世論』の中で、新聞についてこう指摘している。
「ニュースと真実とは同一物ではなく、はっきりと区別されなければならない。(中略)ニュースのはたらきは一つの事件の存在を合図することである」
「新聞はサーチライトのようなもので、休みなく動き回りながら暗闇のなかに一つまた一つとエピソードを浮かび上がらせる」
確かに、新聞をはじめメディアのできることは、闇夜に漂う巨大で複雑な多面体である「真実」の一部分・一断面である個々の「事実」に光を当てることぐらいだろう。可能な限り、多方面からサーチライトを照射しても、全体像を把握するのはなかなか難しい。