秘録金正日(64)

発覚した「太っちょグマ」こと金正男暗殺計画 高英姫は「事故」で重体 後継者めぐる暗闘の行方は…

 「結論は一つしかない。誰かの教唆を受け、運転手が故意に事故を起こしたのだろう。背景には、金正男がいる」

 軍部内には、長男である金正男の追随者が多かった。当時、軍中枢の幹部らに「大将」名義で、シカ肉と朝鮮ニンジンが贈られたことが確認されている。元軍将校の崔周一(チェ・ジュイル=仮名)の証言によれば、軍部内では、金正日を「将軍さま」、正男を「大将さま」と呼んだが、「大将さまの贈り物」が届いたのを覚えているという。

 金日成時代から金一家の警護を担い、元帥として軍に影響力を保持した李乙雪(ウルソル)ら老幹部が正男の後ろ盾となった。何より党・政・軍に広い人脈を持つ叔父の張成沢(チャン・ソンテク)が正男を支援した。

 英姫と正男、その支持者らによる暗闘は、04年の英姫の死去で収束するかに思えた。しかし、同年12月、ウィーン滞在中の正男を狙ったとされる暗殺計画が明るみに出て、世間を騒がす。正哲と正恩兄弟を推す勢力が背後で動いたという見方が支配的となる。

 事件発覚から間もなく、正日は「後継者問題を口にする者は野心家だ。(後継者問題は)議論も、提起もするな」と指示したといわれる。後継者問題は、しばらくタブーとして封印されることになる。=敬称略

(龍谷大教授 李相哲)

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