2度にわたるパリのテロ事件の後、はためく三色旗の波をテレビで見ながら、ふと深刻な感慨に襲われた。3色はそれぞれ自由、平等、友愛を表しており、今やこれは先進国の共通の価値観になっているわけだが、思えば近代世界は厄介な約束を背負い込んだものだと、あらためて感じたのである。
《テロリストにつかれた自由の隙》
3つの価値は互い矛盾していて、どれも完全に実現できないものであることは、始めから自明だからである。完全な自由を許せば身勝手な競争をそそのかすことになり、貧富の格差を招くのは目に見えている。逆に、平等の徹底を求めれば富の分配を権力の手に渡すほかはなく、官僚の独裁をもたらすことはかつての社会主義社会が教えている。