<千手観音立像が居並ぶ三十三間堂は、ずばり「ウィーアーザワールド状態」。さらに映画「エマニエル夫人」の籐椅子に座る有名なポーズのルーツは、弥勒菩薩半跏思惟像にあると大胆分析。仏像をグッと身近に感じさせてくれた>
だいたい誰かが「国宝」を決めてるって、むなしいじゃない。国宝も重要文化財も関係ない、「僕宝」を自分で決めればいいじゃない。「僕宝」--ずいぶん長く提唱したんだけど、定着しない(笑)。
自分が「グッとくるもの」があるのに、既成の評価がないと人は不安なんだよね。「価値がある」って言われてはじめて、ようやく認知できる。
でもこっちは小学生だったから、教科書に載ってるとか国宝だとかをすっ飛ばして、単に「かっこいい」が原点。だから後に仏像についていろいろ問われたときに困って、勉強した。でもつくづく思うのは、『見仏記』がヒットしたり、仏像展の「仏像大使」に任命してもらえるのは、後で学んだ知識よりも、小4以来の「好きの貯金」のおかげだね。
「次世住」とは、「次世代の住職」の略。『見仏記』を始めた頃はよくご住職たちからお叱りを受けたけど、今、どこも世代交代して「次世住」になってる。みな『見仏記』以降の人たちだから、話が通りやすい(笑)。「ずっと寺を継ぎたくなかったが、『見仏記』に自分の寺の仏像のことをかっこいいと褒めてあったので、自分も仏像が好きになった」という若い住職の方もいた。『見仏記』のビフォーとアフターで、世間の常識がひっくり返った。