月刊正論

対談・阿比留瑠比×秦郁彦 「慰安婦」日韓合意の「最終的かつ不可逆的解決」の行方

 阿比留 韓国政府にすれば、親北朝鮮の挺対協についてはもう最初から話にならないほど持てあましている。挺対協というとかつては政府の政策に拒否権を持つといわれた圧力団体でしたが、ベトナム戦争における韓国軍の虐殺など韓国政府に矛先を向けたり、徐々に煙たく力を弱めてもらわないと困るくらいの存在になっている。

 これに対して、ナヌムの家は政府との友好関係が今も一定程度あって、また政府から見ても友好関係を作りたい。彼らの要求を呑んで大事にしたいという政治的思惑があって、それが判決にも反映したのではないでしょうか。朴氏を訴えたのはナヌムの家の元慰安婦たちですから。

  加藤達也産経新聞前ソウル支局長の件では無罪判決を出した。ところが、朴裕河さんのケースでは賠償を命じている。点数を稼いだ直後にそれを打ち消しにするかのような動きで理解に苦しみます。

 阿比留 そこは韓国政府の中でもたぶん振り子のように揺れているのだろうと思います。加藤氏と朴さんのケースを比べると、同じ民主主義が問われる事案ではあるのですが、加藤氏は海外のメディアに携わる人間が訴追されたケースです。それに対して朴さんのケースはあくまで韓国国内の問題でしょう。韓国政府がそうした違いを明確に使い分けているということではないでしょうか。

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