写真集チラ見せ

怖すぎる美をディープに追求したらこうなった…球体関節人形の妖しい魅力『天野可淡 復活譚』

 片岡さんは生前の天野さんとも面識がある。天野作品を初めて目にしたのは、札幌で店を開いて間もなくの昭和55年ごろ。そのときの印象を、「目にした瞬間、魂を取られたように愕然として、すごい衝撃を受けた。こんな人形ってあるのか、と思いました」と語る。それからすぐ天野さんの自宅を訪ね、作品を自分の店で売らせてほしいと頼み込んだという。「実際にお会いしたら、人形のイメージとは全然違う女性でした。色白でおとなしくてきれいで、とても、あんなものすごい人形を作る人とは思えなかった」

 今回の写真集では、片岡さんが所蔵する人形を中心に67枚の写真を収録。室内だけでなく海岸や庭など屋外でも撮影しており、全体に暗い色調の背景から妖しい美しさの人形が浮かび上がる趣向となっている。

 撮影にあたって、片岡さんが最も苦心したのは「目」の表現だ。天野さんは制作時、まずその人形の性格を詳しく決めて、それに合わせて油絵の具で眼球の虹彩(こうさい)を精緻に描き込み、その上からガラスをかぶせていた。繊細な感性に基づくきわめて手の込んだ技法で、今に至るまで誰も真似できていないという。「天野さんの人形のすごさは、目に集約されています。だから昼間でもライティングを行い、目を強調するようにしました」

 有名作家の作品だと1体数百万円の値段が付くこともあり、近年アンティークの一ジャンルとして人気が高まっている球体関節人形。片岡さんは、本当に価値のある人形については▽美しさ▽かわいさ▽存在感▽宗教感▽品格-の5つの基準を満たしているかを判断する必要があると話す。「その5つすべてが備わっているのが、天野さんの人形です」

(磨井慎吾)

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