書評

『真実の10メートル手前』米澤穂信著

『真実の10メートル手前』米澤穂信著(東京創元社・1400円+税)
『真実の10メートル手前』米澤穂信著(東京創元社・1400円+税)

 ジャーナリストの太刀洗万智がさまざまな事件を取材する姿を描いた短編集。昨年の主要ミステリーランキングで三冠を達成したヒット作『王とサーカス』の前日譚(たん)(または続編)として楽しめる。高校生の心中事件、高齢者の孤独死、女児の刺殺事件…。こびずたじろがず、真っ正面から人にぶつかり、違和感を見逃さず、拾い集めた事実の断片から隠された真相を探り当てていく主人公。表題作が象徴的だが、「真実」を手にする謎解きのカタルシスと、同時に漂う無常感がこのシリーズの妙味だろう。〈しかし、彼女の口許(くちもと)に浮かんだのは、諦念(ていねん)の笑みだった〉(東京創元社・1400円+税)