鑑賞眼

歌舞伎座「二月大歌舞伎」 魅力ある人物像、出色の「新書太閤記」

 昼に「新書太閤記」の通し。これが面白い。吉川英治原作の歴史小説で、日吉丸→木下藤吉郎→秀吉と、出世魚のごとく上り詰める日本英雄伝説のバイブルのような物語だ。新聞連載中の昭和14年に六代目尾上(おのえ)菊五郎が初演して評判となり、現在に連なる歌舞伎レパートリーに。今回は、当代菊五郎が現代視点の歌舞伎仕様で勤め、楽しさを倍加させた。今井豊茂の脚色、演出の功も大きい。

 まず、人口に膾炙(かいしゃ)した藤吉郎エピソードをぽんぽんと並べた場割りが良い。序幕長短槍(やり)試合からビジュアル性と適材適所の配役による人物像の魅力に引き込まれる。「サル、サル」と連呼される藤吉郎の愛嬌(あいきょう)ある人間味に菊五郎が絶妙にはまる。中村梅玉(ばいぎょく)の信長が気品と癇癖(かんぺき)、硬質なたたずまいが逸品。寧子の中村時蔵のほあんとした味も癒やし。中村歌六(かろく)の前田利家が優しい。竹中閑居の半兵衛=市川左團次。叡山焼討本能寺を経て、清洲会議で天下獲りの第一歩をつかむまで。中村東蔵が藤吉郎母・なかで毎度の抜群な老婆(ろうば)ぶり。中村吉右衛門(きちえもん)が明智光秀で付き合う。