フィリップ役の平埜が兄によって家に閉じ込められ、外の世界におびえていたところを、ハロルドの影響で生き生きと変化していく過程が鮮やかだ。暴力的なトリート役の柳下が、恥ずかしさを残しながら少しずつ素直になっていく様子には等身大の魅力がある。
救いのない境遇でも偶然の出会いが光をもたらすことがある。周囲の人とのつながりが、いとおしくなるような舞台。柳下が、かつて舞台で指導を受けた宮田に直談判して実現したという。ベテランの高橋が若手2人を包み込んで支える。21日まで、東京芸術劇場シアターウエストで。兵庫公演あり。(藤沢志穂子)