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大阪制作だからおもしろい! 「あさが来た」にNHKの意地を見た 影山貴彦(同志社女子大学情報メディア学科教授)

 ヒロインの白岡あさのモデル、広岡浅子は日本女子大学の創設者ですし、福沢諭吉、渋沢栄一、大隈重信など誰でも知っている歴史上の人物も登場させてバランスを取った描き方をしています。バランスの上手さでいえば『ごちそうさん』も序盤に東京の実家を描いてから大阪に嫁ぎましたし、民放でも大ヒットを記録したTBS系の『半沢直樹』も前半の梅田支店で大阪の視聴者をつかんでおいて、後半で東京に乗り込む図式を作ってましたよね。関西の人間は情に厚いから、東京編でも視聴者は離れなかったわけです。

 今、テレビは東京ローカルと全国ネットがほとんど同じになってますよね。関西人は自己愛が強すぎる傾向があるので、排他的な関西愛のエンターテインメントになってしまうと全国区には受け入れられない。過去の視聴率が証明しているように大阪の視聴率は多少上乗せされるでしょうが、東京は高視聴率になりません。東京と大阪は人気番組でも視聴率に5%以上の違いが出る場合がありますから、たった500キロしか離れていないのに、ここまで違う嗜好性を持っていることは作り手、研究者の両方の観点から興味深いと思います。

 そのほか、『あさが来た』が好調な理由を挙げると、ヒットした『下町ロケット』(TBS)の佃航平もそうですけど、あさがまっすぐな主人公で、奇をてらわずに成長の様を描いていますよね。しかも企画・脚本・演出・演者が揃っているから、陳腐なドラマにならずに現代の視聴者から共感を得ることに成功したわけです。加えて『まれ』があのような中途半端な結果になってしまったことも大きい。作り手から言えば前後の番組は非常に重要です。もし『あまちゃん』のあとを受けていたら、今ほど礼賛はなかったかもしれません。だから次の東京制作の『とと姉ちゃん』は必死でやってくるでしょうから見ものですね。

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