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大阪制作だからおもしろい! 「あさが来た」にNHKの意地を見た 影山貴彦(同志社女子大学情報メディア学科教授)

 なぜそう言えるかというと、私がMBSに入社してから出会ったある上司から教育を受けてきたからです。私はテレビとラジオの企画・制作に計15年半携わってきましたが、入社10年目ぐらいに念願かなってラジオ番組『MBSヤングタウン』(ヤンタン)のプロデューサーとなりました。そのときヤンタンを作った渡邊一雄さん(初代プロデューサー)から「いろいろなタレントがヤンタンをきっかけに売れていく。お前もタレントやプロダクションから『東京のスタジオで放送させてください』と言われるようになるだろうけど、出来る限り大阪でやれよ。ヤンタンを作ってるんだから大阪からやることにこだわれ。それで空気感が変わるんだから」と言われたんです。

 私は半信半疑だったんですが、50歳を過ぎた今になって渡邊さんの言ってたことがわかるようになった気がします。この「大阪で作るこだわり」が『あさが来た』にも生きていると思います。大阪局も東京も同じNHKではありますが、大阪局には「絶対東京には負けない」という精神があるんじゃないでしょうか。民放を含む大阪の作り手はそうあるべきだと思っていますし、現役の作り手たちには肝に銘じて欲しいと思っています。でも「大阪で作るこだわり」を忠実に守っているのが皮肉なことにNHKなんですよ。半年の放送期間という同じ条件で、出演者に撮影のために半年以上の大阪滞在を強いるわけですから。

 それは題材にも表れています。『あさが来た』でも「東京が何でもかんでも中心じゃ駄目なのよ、大阪が頑張らないと駄目なのよ」といった内容を脚本に書かせて放送に反映させていますよね。東京への反骨精神を肌で感じている大阪の人間は拍手喝采を送るわけです。東京の人間はそこまでは感じていないでしょうけどね。それでも東京の視聴率がいいのは確実に関西人に受けて、さらに東京にも受け入れられる題材としてしっかり作っているからです。

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