正論

現行憲法では危機を乗り切れない 反対派の詭弁に惑わされず緊急事態条項を 日本大学教授・百地章

 しかし現行憲法には緊急事態条項がなく、東日本大震災の折には災害対策基本法で定められた緊急政令も出せなかった。これで国民の生命や安全は守れるのか。

 ところがこれに対して、緊急事態に対処するためには必要な法律を整備すれば足り、憲法改正は不要とする反対論が展開され始めた。朝日新聞は一面を割いて、長谷部恭男教授と杉田敦教授の対談「改憲の『初手』? 緊急事態条項は必要か」を掲載、「憲法でなく法律で対応を」といった見出しを付けている(1月10日付)。

 また毎日新聞も「特集ワイド 本当に必要? 『緊急事態条項』 」と題する特集を組み(2月2日夕刊)、災害対策基本法など今の法律を使いこなせば十分との弁護士らの発言を紹介している。しかし、本当に法律だけで大丈夫なのか、さまざまな疑問がわく。

法律万能は立憲主義の否定に

 第1に、災害対策基本法のような緊急事態のための法律は幾つかあるものの、実際に役に立たなかったではないかという点である。

 例えば、流れ着いた家屋や自動車を撤去しようとしたところ、憲法が保障する「財産権」がネックとなったとか、倒壊した家屋から負傷者を助けようとしたところ、「住居の不可侵」との関係で障害が生じたといった事態が各所で発生している。また、災害対策基本法に定める緊急政令が発せられなかったため、ガソリンなどの買い占めを規制することもできなかった。それでも法律があるから良いというのは無責任ではないか。