航空自衛隊のF15戦闘機パイロットは、機体の愛称からイーグル・ドライバーとも呼ばれ、世界各国の空軍パイロットのなかでも卓抜したテクニックを持つ。そんな彼らが「別格」と畏怖する精鋭部隊が、カラフルな特殊迷彩を施したF15を操る「飛行教導群」だ。
敵機を意味する「アグレッサー部隊」として日本各地の戦闘機部隊を巡回し、訓練・指導することを主任務としている。隊員の右胸にはドクロ、左肩にはコブラのワッペンとおどろおどろしい。ドクロには空中戦では小さなミスが即座に死に直結するとの訓戒が、コブラにはより広い視野を持てとの意味が、それぞれ込められている。
各地の戦闘機部隊との訓練では、常に訓練相手より半歩上をいく強敵を演じ、相手パイロットのレベルを高める。稽古をつける相手より実力が下では話にならないが、圧倒的に強くても実のある訓練にはならない。相手のレベルに合わせながら訓練の濃度をコントロールできるところに、教導群の凄みがある。ときには日本領空を脅かす中国機やロシア機の飛行を模写することもある。ある空自パイロットは「同じF15を操縦しているとは思えない」と、その技量に舌を巻く。
拠点の新田原基地(宮崎県)では、教導群の隊員同士で日本側と仮想敵国側に分かれて訓練を行う。通常の訓練よりも過酷な状況を想定し、中距離戦、近接格闘戦(ドッグファイト)などを行い、みずからの技を磨いている。観客を魅了する美技を披露するブルーインパルスを空自の光とするなら、敵機役を務める教導群は最強の影といったところだ。