限界宗教法人問題

重文3件を売却、高齢夫婦の年金生活で寺守…厳しい地方の寺院経営

 複数の寺を運営する若手の住職も、今後に不安を感じている。同県山添村の不動院で、7寺の住職を兼務している前川良基(りょうき)住職(42)。各寺を回るのは月1回程度だが、今は200軒前後ある檀家がそれぞれ管理にあたってくれている。だが村は22年から30年後には、総人口が約55%減の1848人になると試算されている。

 「寺の維持管理に協力してくれている檀家さんは60~80代の方々。地域の高齢化は進み、人口も減っている。15年後、20年後、寺を守り続けることはできるのだろうか」と語った。

 県内では、世界遺産の法隆寺(斑鳩町)でも、少子化の影響で参拝客の多くを占める修学旅行生が減少、維持費の確保を理由に昨年1月から拝観料を1・5倍の1500円に引き上げるなど、有名社寺であっても信仰の場をどう維持するかが、大きな課題になっている。

 奈良国立博物館の内藤栄・学芸部長(仏教工芸史)の話「長年、文化財が寺にあること自体が文化。だが、守れない場合、民間や海外への流出を防ぐため、国が買い取り、国民のものとするメリットは大きい」

 山岸公基・奈良教育大学教授(日本・東洋美術史)の話「文化財は地域の宝。個別の事情にもよるが、できるだけ地域で保存し、難しいなら寄託や寄贈が望ましい。国による買い取りは膨大な費用がかかってしまう」

会員限定記事会員サービス詳細