【限界宗教法人問題】重文3件を売却、高齢夫婦の年金生活で寺守…厳しい地方の寺院経営(1/2ページ) - 産経ニュース

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限界宗教法人問題

重文3件を売却、高齢夫婦の年金生活で寺守…厳しい地方の寺院経営

本尊の弥勒如来坐像を見つめる伊藤教純住職。「後世へ守り続けたい」と話した=奈良県大和高田市
本尊の弥勒如来坐像を見つめる伊藤教純住職。「後世へ守り続けたい」と話した=奈良県大和高田市

 国学院大学の石井研士教授の調査で浮上した「限界宗教法人」問題。世界遺産に登録されるなど著名な寺社が多くある一方、3分の2にあたる26市町村が「消滅可能性都市」とされる奈良県は、全国でも最も事態が深刻な都道府県の一つだ。今回の調査では、計3847ある宗教法人のうち、実に49・7%にあたる1912法人が「限界」と判明。地域の信仰の場をどう維持し、文化財を守っていくのかが、大きな課題になっている。

 「田舎の弱小寺が重要文化財の仏像などを持っていると、いつ盗まれるか、なくしてしまうか、と気が気でない。国が保存して貴重な文化財として継承してくれたほうがいい」

 飛鳥時代建立とされる奈良県内のある寺は、平成21年から昨年末までの間に所蔵していた仏像など、重要文化財3件を相次いで文化庁に売却した理由をこう説明した。

 この寺も試算で消滅可能性都市とされた自治体にある。特定の宗派に属さない単立寺で、檀家(だんか)はなく、観光客も少ない。住職も普段は働きに出る兼業だ。寺側は「敷地内の墓地も売れないし、寺をいつまで続けていけるか。将来には不安しかない」と話す。

 文化財の売却額は10億円近くになったが、寺の運営費や修理費などに充てているという。今後は「仏像を守るというより、精神の醸成を図る取り組みをしていきたい」とした。売却した文化財は、奈良市の奈良国立博物館に移された。

 文化庁によると、寺や個人からの重文などの売却申し込みの届け出数は23年度以降、毎年20~40件。同庁の国宝・文化財購入予算は24年度以降、毎年約13億円で推移している。

 関係者によると、寺が所有する重要文化財を立て続けに売却することはまだ珍しいというが、文化庁の担当者は「今後、経営難の寺院が増加すると、重文の寄託や売却は多くなるかもしれない」と話す。

 一方、同様に消滅可能性都市とされた同県大和高田市にある弥勒(みろく)寺。長年住職が不在だったが、現住職が着任してから3年後の24年、本尊の弥勒如来坐像(みろくにょらいざぞう)は県指定文化財から国の重要文化財に格上げされ、本堂などの修理が必要になった。国や自治体の補助を受けることはできたものの、約350万円は寺の自己負担だった。

 寺に檀家はなく、収入は夫婦2人の年金だけだが、伊藤教純(きょうじゅん)住職(73)は「お経をあげて茶を供え、仏様の身近に仕えるのが一番ありがたい。仏様の教えを地域の人々に伝えていくことで本来の信仰が生きる」と、今後も寺で守り続けるつもりだ。

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