問題の本質は国家主権の侵害
北方領土の日(7日)を迎える。領土問題と日露関係について考えたい。人類は国家だの領土だの愚かなことで、何時(いつ)まで性懲りもなく戦争や紛争を続けるのか、という気持ちは多くの者が共有している。政治学の分野でも、21世紀には国民国家や領土・国境問題は過去のものになるとの論が、つい10年前までは支配的だった。
しかし、現実は全く逆になった。欧州や中東、アフリカ、東アジアでも、領土・領海・国境問題や国家主権の問題は、今日極めて深刻な紛争を引き起こしている。いま生じている重大な国際問題のほとんどは破綻国家絡みで、主権国家が確固としていたら防げた筈(はず)だ。国家主権は基本的人権と同じく、歴史的に形成された概念で、あえて言えばフィクションだが、それを絶対的なものとして扱ってきたのは人類の叡智(えいち)である。