復興への滑り出しは上々-。川俣町の山木屋地区に5年ぶりに復活した天然のスケート場「田んぼリンク」。1月31日、冬の風物詩として親しまれた人気スポットに子供たちの歓声が戻った。地区には東京電力福島第1原発事故による避難指示が出されたが、除染が完了したことから、町は今春の避難指示解除を目指す。地元住民はリンクの復活で「地区の復興と住民の帰還に弾みを付けたい」と期待を込める。 (野田佑介)
「自然の中で滑ることができて気持ちよかった。氷の感触が懐かしい」。山木屋中3年の佐藤風那(ふうな)さん(15)は故郷の風を感じながらゆったりと滑ると、満足そうにほほ笑んだ。
佐藤さんが最後に田んぼリンクに立ったのは小学4年の冬。「当時は1日中滑っていたこともあった。思い出がよみがえります」。原発事故により町内の借り上げ住宅で避難生活を送る。生まれ育った地区に戻ることも少なくなった。「スケートの楽しさを教えてもらった場所。たくさんの人が集まれば町も明るくなる」と復活を喜んだ。
国体選手120人誕生
水田に水を張ってつくる全国でも珍しいリンクは昭和59年、町などが阿武隈山地に近い標高約550メートルの山あいに設けた。冬場の最低気温が氷点下15度以下にまで下がる地区特有の気象条件を活用。収穫を終えた約50アールの水田に近くの川の水をくみ入れて作った天然の氷の上でスケートを楽しめる。