医療機関の診療報酬請求権を買い取り「レセプト債」と呼ばれる債券を発行していたファンドなどが破綻した問題で、証券取引等監視委員会が、債務超過の事実を隠して販売していたアーツ証券(東京都中央区)の経営陣について、金融商品取引法違反(虚偽告知)罪で検察当局に刑事告発する方針を固めたことが1日、関係者への取材で分かった。監視委は近く、同証券など関係先の強制調査に乗り出す方針。
同債をめぐってはファンド3社と運用会社「オプティファクター」(東京都品川区)が昨年11月に約291億円の負債を抱え破綻。約2470人の投資家に発行された約227億円分の債券が償還されなくなっていた。監視委によるとアーツ証券は平成16年6月以降、同債を約60億円分販売。川崎正社長ら経営陣は遅くとも25年10月ごろまでにオプティ社の社長から、資金がオプティ社の関連会社に流用されるなどしてファンドが債務超過状態にあることを知らされながら、事実を隠して販売を継続した疑いが持たれている。
川崎社長らは「安全性の高い商品」と記載した勧誘資料などを継続使用。オプティ社社長とともに、同債を扱うほかの証券6社にも虚偽の決算書などを示して販売を継続させていた。
監視委は、こうした行為が金商法が禁じる「虚偽告知」に当たるほか、投資家に錯誤を生じさせる詐欺的行為の「偽計」にあたる可能性もあるとみている。オプティ社の経営陣についても共犯に問えるとみて慎重に調査している。レセプト債問題をめぐっては、金融庁が1月29日に、監視委の勧告を受け、同証券に金融商品取引業の登録取り消しなどの行政処分を出した。
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アーツ証券は1日、東京地裁に自己破産を申請し、保全管理命令を受けた。帝国データバンクによると、負債総額は約59億円。