後継者を何が何でも育てる 平成の名人、歌舞伎俳優・澤村田之助(83) 

 紀伊国屋の芸風は江戸和事といわれるように、江戸の粋に上方の柔らかみが混じり合った芸が特徴だ。しかし今、後継者はほとんどおらず、「大変厳しい状態」と眉をくもらせる。

 そんな田之助のライフワークが国立劇場歌舞伎俳優養成の主任講師だ。昭和59年の8期生から講師を務めている。素人の若者を2年間で舞台に立てるよう指導するのは大変な仕事だ。

 「何が何でも育てなくちゃいけないんです」

 柔和な目が一瞬、鋭く光った。それは歌舞伎の未来を見つめる目である。(亀岡典子)

 澤村田之助(さわむら・たのすけ) 昭和7年、東京生まれ。五代目澤村田之助の長男。16年3月、歌舞伎座「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の鶴千代ほかで四代目澤村由次郎を名乗り、初舞台。39年4月、歌舞伎座「神霊矢口渡」のお舟などで六代目澤村田之助襲名。