後継者を何が何でも育てる 平成の名人、歌舞伎俳優・澤村田之助(83) (1/4ページ) - 産経ニュース

メインコンテンツ

後継者を何が何でも育てる 平成の名人、歌舞伎俳優・澤村田之助(83) 

 この人が演じる江戸の世話物には、はるか昔、江戸の町の片隅に生きた庶民の女のにおいがする。

 「魚屋宗五郎」のおはまでは、酒乱の夫、宗五郎を体を張って止める良い女房ぶりを見せ、「加賀鳶(かがとび)」のお兼は江戸の闇に咲く女を体現した。深い情ときっぷ、悪の色気。市井の女を写実的に演じていても、そこにはおのずから身に備わった品格が見える。

 「でもね、女形は大変ですよ。まずは正座をきちんとしないといけません。その上で、立ったり座ったりが多い。特に世話物は、舞台上で家の中の用事もいろいろありますしね」

 長年にわたって酷使した膝を痛め、人工関節の手術を受けて治したが、それでも正座は難しく、一昨年5月の歌舞伎座「矢の根」の十郎以来、舞台に立っていないのは残念な限りだ。

 「私も悔しいですよ。正座しなくても良いお役ならぜひまた、やりたいですね」