一筆多論

介護職の処遇改善に王道は 佐藤好美

 「介護職は離職率が高い」と言われるものの、半数の介護事業所の離職率は10%未満で、全産業平均より低い。一方、30%以上の事業所は2割超。質の悪い事業所が業界のイメージを形成している。

 国は平成21年から、介護職の処遇改善を行ってきた。賃金は本来、労使で決めるものだが、介護は公定価格だから、国の関与も必要なのかもしれない。だが、本当は利用者が質の高いサービスを選び、それを提供する介護職の専門性が評価され、スキルに応じて賃金が上がっていくサイクルが必要だ。一方で、1年に介護職の3分の1が入れ替わるような事業所が淘汰(とうた)されないと、専門性は育たず、処遇改善もおぼつかない。

 利用者や家族は処遇改善を願うだけでなく、できることがある。サービスを選ぶ際は事業所の離職率を聞き、一指標にしてほしい。市場が意思を示すことは、処遇改善の王道だと思う。(論説委員)

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