一筆多論

介護職の処遇改善に王道は 佐藤好美

 あおいけあの事業所には、日々のスケジュールがない。「おはぎを作ろう」の声が出れば、要介護の高齢者が能力に応じて買い出しに行き、おはぎを作る。「ゴミ拾いをしよう」となれば、みんなで公園に繰り出す。地域の役に立つゴミ拾いは人気の活動で、車いすの高齢者がおぼつかない手つきでトングを持ち、ゴミを拾う。

 そうこうするうちに、暴言や暴力、徘徊(はいかい)や失禁で手に負えなかった認知症の高齢者が「ただのじいちゃん、ばあちゃん」(加藤さん)になっていく。介護はオーダーメードだ。本人の意欲を引き出し、少し手助けし、自立を促すところにやりがいと専門性がある。「僕のところは、賃金がとりわけ高いわけじゃないけれど、介護職はそう辞めないですよ」(同)

 こういう話をすると、「そういう支援は、重度の利用者には難しい。介護職もやりがいを見いだせない」と言われる。だが、ある特別養護老人ホームの施設長は「重度者が多い施設では、看取(みと)り支援がメーンになる。意思疎通ができなくても、自然体の、きれいな姿で送り出すことが私たちの勲章です」とする。あるべき支援を、チームで達成するところに専門性と喜びがあるのは、自立支援も看取り支援も変わらない。

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