フォード日本撤退 競争に取り残され、世界戦略見直し重なる GM、クライスラーも日本離れの動き

 米自動車大手フォード・モーターが今年末までに日本市場から撤退する。アメ車ブームなどで1990年代には2万台以上を売り上げることもあったが、昨年の販売台数は4分の1程度まで落ち込んでいた。撤退に踏み切った背景には、商品やブランド力を強化する日本車やドイツ車との販売競争で劣勢が続いていたことに加え、フォード全体の世界戦略がある。(田村龍彦)

 フォードは日本では96年に過去最高となる2万244台を販売した。だが、ここ数年は5千台以下で低空飛行が続いていた。

 業界関係者は「アメ車やスポーツ用多目的車(SUV)のブームで好調だった頃から変わらずやってきたが、お客さんも他社も変わったため」と指摘する。

 2000年代に入り、日本の消費者は燃費への意識を強め、日系メーカーのハイブリッド車(HV)が大きくシェアを伸ばした。

 一方、輸入車ではBMWやアウディなどドイツの高級車メーカーが、商品力に加え、デザインなどをアピールしてブランドイメージを向上。若者など新たな顧客層を開拓していった。

 販売台数の多い輸入車メーカーは本社に日本市場向けの装備を要請したり、販売店を増やしたりできる。一方、フォードは台数が伸びず、「販売店も増やせない悪循環」(輸入車メーカー)に陥った。

 また、フォードの14年の世界販売約630万台のうちアジア太平洋地域は約140万台で、110万台以上を中国で稼ぎ出した。中国シフトを強め、マツダへの出資を引き揚げた中、相対的に日本市場の重要度が低下したとみられる。

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