アメリカを読む

ついに下院もオバマケア廃止法案を可決 オバマ大統領は「時代に逆行する」と拒否権を発動したが…

 一方のオバマ氏は8日、議会から送付された廃止法案に拒否権を発動。共和党が議会で3分の2以上の賛成を集めて拒否権を覆すことは事実上不可能で、オバマケアの存続は確実だ。

 オバマ氏には、低所得者への補助金提供や保険会社が病歴を理由に保険加入を断ることを禁止することなどで無保険者を減らすというオバマケアの理念は米国全体の利益にかなうという信念がある。実際、12年段階では4800万人いた無保険者は14年には3300万人まで減っており、オバマ氏は「廃止法案は時代に逆行する内容だ」と厳しく批判する。

国民の支持は41%

 しかし米国民のオバマケアに対する評価は複雑だ。米紙ニューヨーク・タイムズとCBSテレビが12日に発表した世論調査ではオバマケアへの支持は41%にとどまり、不支持の52%を下回った。またオバマケアに修正を加えるべきだとの意見は回答者の53%、廃止すべきだとの意見も35%を占めた。共和党支持者に限れば廃止すべきだとの意見は65%に達している。

 無保険者の大幅減にもかかわらず、オバマケアへの不支持が根強いのは、医療保険を広く提供するという理念を実現するためには、加入者に求める負担の引き上げが避けられないからだ。米政府によると、連邦政府が運営する保険購入サイトで提供される保険の16年の保険料は前年比7.5%上昇した。多くの加入者は政府からの補助金で自己負担は抑えられるが、所得が高い約2割の加入者は保険料上昇の影響をそのまま受けることになる。

会員限定記事会員サービス詳細