ソウルからヨボセヨ

姿を消した淫靡な「茶房」の味が復活

 韓国ウオッチャーの郷愁に「タバン」がある。漢字では「茶房」だから喫茶店のことだ。だいたいビルの地下にあって薄暗く、客がくるとチマチョゴリを着たマダムが気だるそうな声で「オソッセヨーン(いらっしゃーい)」と迎え、コーヒーを運んできては客の横に密着して座り、コップのお湯に浮いたインスタントコーヒーの粒をスプーンでかき混ぜ溶かしてくれる。

 砂糖と粉ミルクをたっぷり入れるので実に甘ったるい。これが韓国コーヒーの原型である。昔は高級韓国料理店でも最後はこれが出た。その後、1990年代以降に「ウォンドゥ(原豆)コーヒー」が一般化し、あの淫靡(いんび)なタバンも姿を消し、明るいガラス張りの「コーヒーショップ」になった。

 それでも「タバンコーヒー」になじんだ人は多い。そこでコーヒーと砂糖と粉ミルクを配合しスティックにした即席コーヒーが今も人気で、食堂やオフィスなどでも紙コップ入りをよく無料サービスしている。

 ところで最近、都心のこじゃれたコーヒーショップのメニューに「コリアーノ」とあるので「何じゃ?」と聞くと、昔懐かしの「タバンコーヒー」だという。このネーミングはうまい! 韓国人のコーヒー好きは世界的だが、ついに「コリアーノ」を開発したか。(黒田勝弘)

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