月刊正論

門田隆将 国民の命を守ることが憲法違反なのか? 「内なる敵」のため迷走し続ける邦人救出問題

 海岸にうち上げられた瀕死の乗組員を背負って崖をよじ登り、近くの寺に運んで懸命に救命措置を施した村民は、それぞれの家からわずかに蓄えていた食糧を持ち寄り、乗組員に食べさせた。必死の介抱が69名のトルコ人を大惨事から「生還させた」のである。

 この遭難事故に心を痛めた明治天皇が、犠牲者を手厚く葬り、生還者をトルコに送り届けることを指示したことで、国民から一挙に多額の義援金が集まることになる。日本の軍艦「金剛」と「比叡」によって、無事、本国に送り届けられた生還者たちは、日本人が自分たちにやってくれたことを伝えた。それがトルコの人々の胸を打ったのである。

 その後、日露戦争で日本が勝利し、露土戦争で長くロシアに苦しめられてきたトルコの人々は、日本への尊敬を増していく。そんな日本人へのトルコ人による感謝が具体的なかたちとなったのは、実にそれから「95年後」のことだった。

 1985年3月、イラン・イラク戦争が激化し、イランの首都テヘランに連日のように空襲がおこなわれる事態となった。

 さらに3月17日に、イラクのサダム・フセイン大統領が、イラン上空を「戦争空域」に指定し、「48時間経過後、イラン領空を飛ぶものは、軍用・民間を問わず、すべて撃墜する」と宣言。テヘランに駐在していた外国人はパニックに陥るのである。

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