【新元素113番の輝き(上)】ドンペリをたたき割り実験続行「魔の7年間」乗り越え、日本が露米に逆転勝利した真相とは(2/6ページ) - 産経ニュース

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新元素113番の輝き(上)

ドンペリをたたき割り実験続行「魔の7年間」乗り越え、日本が露米に逆転勝利した真相とは

野依氏「素晴らしい金メダルだ」

 元素は物質を構成する基本的な粒子である原子の種類で、原子番号118番まで見つかっている。92番のウランより重い元素は原子核同士を衝突させることで人工的に合成される。113番は理研と、ロシアのドブナ合同原子核研究所を拠点とする露米チームがそれぞれ発見を主張し、10年を超える争いが続いていた。

 科学の世界には、一番手だけに栄誉が与えられる厳しいおきてがある。そう話すノーベル賞受賞者の野依氏は「ノーベル賞は10年で忘れられるが、元素の命名は永久に忘れられることはない。素晴らしい金メダルだ」と最大級の賛辞を贈る。

 勝利の原動力は理研チームの忍耐強さと、愚直に実験を続けるひたむきさだった。主導した森田氏は14年前、実績のあるドイツの実験を再現することから研究に着手。本家を上回る合成率を達成してノウハウを蓄積した。この地道な戦略が大成功の基礎になった。

 チームの姿勢を象徴するエピソードがある。平成16年に1個目の合成に成功したとき、森田氏らは高級シャンパンの「ドン・ペリニヨン」を、飲まずに理研の敷地内でたたき割った。実験は船出したばかりで、これから何が起きるか分からない。船の進水式で酒瓶を割る儀式をまねて、浮かれないように戒めたのだ。

 113番の合成確率は、わずか100兆分の1。砂漠を歩き、ひと粒の宝石を探すようなものだ。2個目の合成は予想以上に早い9カ月後に成功した。しかし、森田氏の上司だった矢野安重特別顧問(67)は「すんなり行き過ぎて、次は長くなるのではと嫌な予感がした」。懸念は的中し、何の成果も出ない「魔の7年間」が始まった。