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現在、兵庫県立美術館(神戸市)で20世紀イタリアの静物画家、ジョルジョ・モランディ(1890~1964年)の大規模な展覧会が開催されている。モランディは故郷ボローニャからほとんど出ることなく、世界の目まぐるしい美術運動の変動とも無縁に、ひっそりと地味な静物画ばかりを描き続けた孤高の画家である。その芸術は時とともに評価を高め、日本でも愛好者は増え続けている。
ありきたりの瓶や容器といった限られたモチーフばかりが描かれた小型の画面は、一見どれも似通っているが、配置や色彩がすべて微妙に異なっている。荒々しく見えるが精妙な筆触と薄塗りの画肌が、画面に変化と生命を与えている。描かれた瓶や器は用途や意味を感じさせることなく、一種の記号のように画面の構成要素に還元されているが、見ていると建造物のような確固とした存在感をもって立ち上がってくる。具象画と抽象画の間を行き来するような鑑賞体験を与えてくれるのだ。
モランディは、一貫して自己の様式を追求しながら、つねに過去の優れた美術を幅広く見聞し、貪欲に学習していた。