浪速風

懐かしき「ミハマ・タイガー」

懐かしい名前に出会った。夕刊2面の「原発に挑んだ12人」のリーダー格の藤井源太郎さんである。(故人)とあるのにいささかの感慨を覚えた。35年以上も前に「原発プロ」という連載で取材した。当時は関西電力の美浜、大飯、高浜の3つの原発を統括する福井原子力事務所長だった

▶社長も親しみを込めて「源さん」と呼んだが、熱血漢でしばしば部下を怒鳴り上げる。美浜1号機の試運転の指導に来ていた米ウエスチングハウス社の技術者が「ミハマ・タイガー」とあだ名をつけた。どんな怖い人かと思ったら、管理職になっても作業服で「運転屋」と称する、まさに原発プロだった

▶記憶に残る言葉がある。「原発は女性名詞だと思うなあ。でも、第一印象はあまり良くない。どうも暗い。もっと化粧させにゃあ」。生涯の伴侶への愛情と言えようか。信頼が揺らぐ原発を泉下の藤井さんはどう見るだろう。「しっかりせい!」と後輩たちを叱咤する声が聞こえる。

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