中国が恣意(しい)的に組織を運営する恐れは、減じるどころか、むしろ高まっているのではないか。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が開業した。インフラ需要が旺盛なアジア勢はもとより、英独仏など欧州諸国も入り、既存の国際金融機関に対抗する体裁だけは整えた。
問題は中国色があまりに強いことである。これでは、中国の都合に左右される不透明な融資が行われる懸念は拭えない。
加えて、最近の中国経済の低迷がある。なりふり構わぬ市場介入などを繰り返すなか、AIIBで自国利益を優先する姿勢を一段と強めることはないのか。独善的な運営を許してはなるまい。
初代総裁の金立群氏は中国財政省の元次官である。本部の北京に常駐の理事はいない。何よりも3割を出資する中国は融資案件に対し単独の拒否権を行使できる盤石の態勢である。
昨年、欧州勢の参加が相次いだ際、組織の内側に入れば、中国の暴走を抑え、公正な運営を促せるとの声があった。実際の組織をみるかぎり、あまりに楽観的だったといえるのではないか。