どんな山にも危険が潜む
2000メートル級の山とは比較にならない過酷な登山キャリアのある谷口さんにとって、さぞ悔やまれる死であったろう。しかし、どんな登山にも死線をさまよう危険は内在しており、低山だからといって軽んじることはできない。谷口さんの死を無駄にしないためにも、登山中の「用足し」の問題は決して些細なテーマではなく、もっと議論を重ねるべきであろう。用足しに伴う滑落事故の危険や環境への負荷を考察することも大切だ(女性はパーティーから見えにくい場所を探すため、より遠くへ離れる傾向がある)。
谷口さんが登山を始めるきっかけとなった冒険家、植村直己は1984年2月、米アラスカ州のマッキンリー山中で行方不明となったが、遭難死に至るまでの詳しい経緯は30年以上たった今も明らかになっていない。自分の限界を追求する登山家の最期は概してそのようなものである。天から授かった「享年」はともに43。人間の生涯としては悔やまれるが、登山家としては決して短かったわけではない。合掌。