スポーツ異聞

女性登山家・谷口けいさんの滑落死から何を学ぶのか? 山のトイレ事情と「用足し」論

昨年暮れ、世界的な登山家、谷口けいさん(43)が大雪山系黒岳(北海道上川町)で滑落死した事故は、世界の山岳関係者に衝撃ニュースとして伝えられた。谷口さんは2007年、世界最高峰のエベレストに登頂し、09年には「登山界のアカデミー賞」といわれる「ピオレ・ドール(黄金のピッケル)」賞を女性として初めて受賞したことでも知られる。死のきっかけは登山中の「用足し」だった。日本を代表する女性アルピニストの無念の滑落死をめぐってさまざまな「憶測」を呼んでいる。

やっかいな「自然現象」

谷口さんは仲間4人と12月20日に入山。冬山装備に問題はなく、翌21日に登頂を果たしている。その後、谷口さんは用を足すためにパーティーと離れ、連絡が取れなくなった。捜索すると近くの斜面に滑落した跡が見つかり、谷口さんのものとみられる手袋も落ちていたという。

世界でもトイレ事情の悪いエベレストのような高峰に挑むクライマーにとって、自分の排泄物をどう処理するかは悩ましい問題である。「一流」といわれる登山家はビニール袋とトイレットペーパーをあらかじめ用意して汚物ごと持ち帰るが、岩陰に放置したままという不届き者も後を絶たない。人間の排泄物の処理をめぐる環境汚染という問題も浮き彫りになっている。

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