福島 風評との戦い(中)

同じ場所の魚なのに「産地」の違いで敬遠… 漁業に著しい影響

 沖合で取れて福島産となった魚はこの5年、「市場での値段は徐々に回復しつつある」と八多さんは指摘する。それでも、大きな懸念は「同じ場所で取れて安全な魚なのに、『福島産』と『他県産』が並んだときの消費者の反応だ」。

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 沿岸漁業ではさらに、27年1~11月の試験操業の水揚げ量が1430トンと、事故前の6%程度にとどまっている。ヒラメなど主要な魚種の出荷制限が解除されていないことに加え、「以前のように出荷しても、どれだけ売れるか分からない」という臆測が大きい。

 沿岸で取れた魚の取引では仲買人のリスクも大きいため、通常の「競り」ではなく、漁協と仲買人があらかじめ交渉する「相対取引」で価格を事故前の半分程度に設定している。

 県や漁協のモニタリングでは、27年4月以降に測定した魚介類約5700検体のうち、放射性セシウム濃度が国の出荷制限の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えた検体はゼロ。「不検出」の検体も全体の約9割を占めている。

 何よりも心配なのが、漁獲量の減少とともに、漁業の担い手も減っていることだ。

 5年に1度行われる農林水産省の漁業センサス調査結果(25年)によると、漁業従事者の数は事故前の1773人から409人に減少。また、県によると、1173隻あった漁船のうち、27年10月末時点で試験操業などで漁に出ているのは500隻ほどになった。事故後内陸へ避難し、他業種への転換を検討している漁師もいる。

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 「このメスのヒラメは、何歳だと思う?」

 「3歳!」「2歳かなぁ」

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