福島 風評との戦い(中)

同じ場所の魚なのに「産地」の違いで敬遠… 漁業に著しい影響

【福島 風評との戦い(中)】同じ場所の魚なのに「産地」の違いで敬遠… 漁業に著しい影響
【福島 風評との戦い(中)】同じ場所の魚なのに「産地」の違いで敬遠… 漁業に著しい影響
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 夜明け前の港に、ぽつり、ぽつりと船の明かりがともった。7日早朝。市場では長靴姿の男性ら数人が白い息を吐きながら、今年初となる水揚げの「漁果」を見極めている。各地の港で初競りが行われ、威勢の良い仲買人の声が響く中、福島県いわき市の小名浜港では対照的な光景が広がっていた。

 「(東日本大震災の)前は何隻も船が着いて、港はもっとにぎやかだった。津波でやられて、見切りをつけた船もある。風評とかもあっからな」。漁師の奥田勝弘さん(46)は甲板の上で輝くサバを眺めながらつぶやいた。この日、2隻の巻き網漁船から水揚げされたサバは約40トン。平成23年3月に発生した東京電力福島第1原発の事故前には、多いときで数百トンの水揚げがあった。

 親潮と黒潮が混じり合う豊かな漁場に恵まれ、「常磐もの」として高く評価されてきた福島の魚介類。それが原発事故で一変する。

 「同じ場所で取れた魚でも、『福島産』というだけで安く買いたたかれる。そんな差別が続いていた」。福島県漁業協同組合連合会災害復興プロジェクトチームリーダーの八多宣幸(はった・のぶゆき)さん(60)は、こう打ち明ける。八多さんは県水産試験場長などを歴任し、「福島の魚」を長年守り続けてきた人物だ。

 小名浜港に水揚げするカツオ、サンマ漁の漁船は原発事故で半数近くに減った。カツオもサンマも主に沖合で取れるため、放射性物質の汚染とは関係ない。にもかかわらず、水揚げした港が「産地」となるため、風評を懸念して福島の港は敬遠されている。そのことは、数字にも如実に表れている。県海面漁業漁獲高統計によると、26年の福島県の漁業の水揚げ量は5644トンで、事故前5年間の平均約4万5千トンのわずか12%ほどにすぎないからだ。

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