2016年シーズンのプロ野球は5人の新監督が指揮を執る。球界に懐の深い、個性派の指揮官が乏しくなったといわれるが、車のハンドルでいえば「遊び」が足りないという声がある。「仰木マジック」の采配で語り継がれる元オリックス監督の仰木彬氏(享年70)が急逝して丸10年がたつ。「飲む、打つ、買う」を公言した不良中年の遊び心と男気あふれる「教え」が改めてクローズアップされている。
忘れない「野球の師」の言葉
昨シーズン限りでユニホームを脱いだオリックスの谷佳知の引退会見。19年間のプロ生活を振り返った谷が今でも「恩師」と仰ぐ仰木監督との思い出に話が及んだ。報道陣から「一番印象に残っていること」を問われ、こう答えた。
「『メンバー表におまえの名前を書くことが一番の仕事や』と仰木監督に言われたことが一番うれしかった。ケガをしてでも試合に出ないといけないことを実感した」
人生の酸いも甘いも噛み分ける指揮官ならではの熱いエールである。たとえお世辞だとしても、一流のお世辞に応えようとしない選手はいないだろう。少なくとも仰木のようなセリフを言えるまでには監督としての一定のキャリアも必要であろう。