みちのく会社訪問

男塾(秋田市) 黒い制服…警備業界で急浮上

 工事現場などの交通誘導やイベント会場などの雑踏警備が中心の警備会社。設立から1年余りだが、昨年5月に秋田市で開かれた東北六魂祭のメーン会場警備を任されるなど、シェアを急速に伸ばしている。

 「男気と優しさを兼ね備えた、寅さんや高倉健さんのような社員がそろった会社でありたいんです」。「男塾」という、ちょっと引いてしまうような社名の意味を熊谷武社長(44)に問うと、そう答えが返ってきた。

 だが女性警備員も多い。「社名の『男』には、頼れる女性も含まれています。女性の活躍の場をどんどん広げていきます」と熊谷社長は説明した。

 昨年9月に入社した山田明美さん(24)は「立ちっぱなしが多いこの仕事で、私たち女性警備員の一番の悩みはトイレです。わが社では、女性警備員が工事現場の仮設トイレではなく、近くの建物のトイレに行けるよう時間を配慮してくれます」と話す。

 ◆待遇改革し地位向上

 黒い制服やヘルメットがトレードマーク。この業界の制服は圧倒的に紺が多い。熊谷社長は「わが社は『警察ごっこ』はしません。警察官みたいな制服を着て、敬礼の練習をするより、サービス業に徹します。黒い警備員はほかにいないから、いい加減な仕事をしたら目立つでしょ」と笑う。

 熊谷社長は会社をつくる前、中堅警備会社の秋田営業所で営業課長を務めていた。同業他社に疑問を感じることもあったという。

 「車を運転していて、質の低い交通誘導員を見かけることがあると思います。『来い来い』と手招きしたり、ひどいのになると人さし指でやっている。私どもはドライバーの目を見て、手のひらを出して『どうぞ』と誘導します」

 待遇の悪さも改革している。「若い人が結婚できないような安い給料では、少子化対策上もよくありません。社会保険に入っていない会社もあります。『旗振り』などとばかにされないよう、警備員の地位向上を図ります」

 ◆異業種参入を目指す

 とはいえ、警備現場が社員の一生の仕事とは位置づけていない。「警備員である前に良識を備えた社会人であれ。ほかの業種でも通用する人間になれ」と教育している。警備員たちの将来のためにも異業種参入を計画中だ。

 まず目指しているのが農産物の生産販売だ。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けて、秋田の農産物の輸出など「攻めの農業」について、農業経験者を採用して研究を始めた。

 もう一つは「踊る場所」の経営だ。熊谷社長は20代のころ、盛岡や秋田の有名ディスコで店長やマネジャーを務めた経験があり、その世界でも有名人だ。

 「若者の出会いの場にしてほしいですね。昼間は高齢者に来てもらって、ラジオ体操でも盆踊りでも何でもいいですから、体を動かしてもらいたいんです。少子化対策と高齢化対策の一石二鳥です」

 夢の実現に向け、熊谷社長のステップは始まっている。(渡辺浩)

 ◆企業データ 本社は秋田市新屋町田尻沢131の9((電)018・893・6945)。業務の拠点は秋田営業所(秋田市川尻御休町5の40、(電)018・824・9390)に移っている。平成26年11月設立、翌月に警備業の認定を受け業務開始。2号警備と呼ばれる交通誘導や雑踏警備を手掛けるほか、異業種参入を目指す。従業員60人。資本金220万円。設立から1年間の売り上げは約1億2千万円。

 【取材後記】取材のきっかけは、以前この欄で取り上げたホームページ制作会社「トラパンツ」が移転し、代わりに「株式会社 男塾」という看板が出ているのを見つけたことだった。秋田市内の工事現場にいる礼儀正しい女性警備員の制服に「男塾」とあり、警備会社と分かった。「変な社名と思われるかもしれませんが、必ず成長します」。熊谷社長の言葉には熱がこもっていた。

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