□川崎病センター長・水野由美医師
「川崎病」の患者が全国で増加を続けています。全身の血管が炎症を起こす病気で、原因はいまだに分かっていない、謎の多い病気です。
こども病院は、昨年7月に川崎病を専門に治療する「川崎病センター」を開設しました。病院での昨年1年間の入院患者は約130人で、過去最多でした。現在、国内で年間約1万5千人がかかり、日本や米国など、先進国に多いといわれています。
季節的に、冬は患者が増える傾向があります。原因不明なので、それもなぜかは分かりません。
診断基準になる症状は6つあります。数日間続く発熱や目の充血▽舌にぶつぶつができるいちご舌▽手足や首のリンパ節がはれる-などです。
ただ、子供が熱を出すことは多いですよね。いちご舌や発疹は「溶連菌」による感染症でも起こります。症状がはっきりしない人もおり、見極めが難しい病気でもあります。
それでも川崎病は心臓に後遺症が出る場合があるので、十分に注意をしなければいけません。そのひとつが、心臓に酸素を供給する冠動脈に「こぶ」ができる「冠動脈瘤(りゅう)」です。
こぶができてしまうと、血液を固まりにくくする薬を、長い間飲み続けなければいけません。
その後、こぶが治る過程で血液の流れが悪くなることもあります。その場合、心筋梗塞を起こさないよう、運動制限が必要になることがあります。
このように長い間経過をみないといけないので、子供にとって、とても負担が大きくなります。
今のところ予防はできませんので、気になる症状が出れば、できるだけ早く、病院に相談してください。発疹は一度出て消える場合もあり、いつごろ出ていたかなどを伝えてもらえば、診断の目安になります。重症化させないために、保護者の目線は非常に大事です。
6つの主な症状のうち2つしかないのに、冠動脈瘤ができることもまれにあるんです。症状が同じで別の病気のこともありますが、常に、川崎病ではないかという視点でみて、疑わしいときは超音波検査を行います。
心臓に異常がなければ、まず大丈夫です。そしてしっかり治療をすれば、こぶが残る人は100人に2人程度です。
長年、患者を診てきて、重い合併症が出てしまう人を、できる限り早い段階で見つけたいと思ってきました。同じ患者でも、炎症を抑える薬が一度で効く人と、そうでない人もいる。なぜこんなに違いが出るのか解明したいと、研究を進めています。
現時点では、何らかの菌や、菌が出す物質が関係しているのではないかといわれており、それを突き止めようとしています。
原因が分かれば、予防もでき、診断方法も確立されます。センターは九州大学と連携し、原因究明に力を入れています。
◇
九州大学病院などを経て、平成9年から福岡市立こども病院小児感染症科勤務。21年、小児感染症科科長に就任。さまざまな臓器、器官に関係する感染症の治療を行ってきた経験を生かし、27年7月から川崎病センターのセンター長を務める。