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TPP合意で同人誌はどうなる? 著作権強化で漫画・アニメの二次創作に残る不安

 一方、原作者が同人誌の二次創作を黙認する理由の一つには、同人誌で経験を積み、プロとしてデビューした作家が少なくないという事情がある。

作家を育む土壌

 「即売会がなければ今の自分はない。ファン同士が直接話せる即売会は、世代や国籍を超えた交流の場。(TPP発効後も)二次創作に配慮されると分かり、周囲はその話題で持ちきり」。20代の女性イラストレーター「りいちゅ」さんは安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 10代のとき、二次創作イラストが編集者の目にとまり、プロとしてデビュー。挿絵やカードゲームのキャラクター制作の仕事の合間を縫い、好きな漫画のキャラの二次創作も続ける。TPP交渉段階で、著作権侵害を原作者の告訴なしに摘発できる「非親告罪」とする方向で進んでいることが伝わり、即売会が続けられなくなると心配していた。

 二次創作はファン活動と捉えられ、同人誌を通じて原作の人気に火が付く事例もあるなど、日本発の文化として定着してきた。矢野経済研究所の調査では、平成25年度の同人誌(ソフトウエアを含む)市場は即売会のほか取扱店への委託、ダウンロード販売も含め約732億円に上る。

国内法を改正へ

 非親告罪化による二次創作の萎縮を懸念した漫画家らが早くから警告を発し、TPP合意では日本の働きかけで「市場における収益性に大きな影響を与えない場合」を例外とするただし書きが盛り込まれた。「故意により商業的規模で行われる」複製を非親告罪の対象としているが、具体的な基準は国内法で整備する。

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