科学

「重力波」キャッチで原始宇宙の謎解明 「予言」から100年、直接観測へ

 太古の宇宙で起きた急膨張は時空をゆがませ、重力波を発生させたはずだ。この原始重力波は、偏光という特殊な電波を宇宙背景放射に残したと考えられている。ポーラーベアが探すのは、この現象に特有の渦巻き模様だ。

 観測に携わる高エネルギー加速器研究機構の羽澄(はずみ)昌史教授は「インフレーション理論が検証できるだけでなく、宇宙の全く新しい概念や根本的な原理が見えるかもしれない」と声を弾ませる。

 羽澄教授は米国と共同で渦巻き模様を地上より高精度に観測するため、「ライトバード」という衛星を日本主導で打ち上げる準備も進めている。「時期は未定だが2025年頃と予想する。世界1位の感度が得られるはず」と意気込んでいる。

宇宙で直接観測の構想も

 原始重力波の直接観測を目指す動きもある。日本の大学や国立天文台などの研究者が提案する「DECIGO」(デサイゴ)は地表の振動の影響を受けず、超高感度の観測が可能な宇宙空間で原始重力波をとらえる構想だ。

 3基の観測機を打ち上げ、1辺が1000キロに及ぶ巨大な正三角形の頂点に1基ずつ配置。互いにレーザーを発射して距離を計測し、地球では検出できない微弱な原始重力波をとらえる仕組みだ。成功すれば、インフレーション理論の詳しい理解につながる。

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