科学

「重力波」キャッチで原始宇宙の謎解明 「予言」から100年、直接観測へ

 中央実験室の先には、レーザーが行き来する真空パイプが3キロ離れた先端へ真っすぐ延びていた。かぐらは7億光年かなたから届く重力波もキャッチするという。人類の宇宙の探究は、ここからどんな展開を見せていくのだろう。

原始宇宙の急膨張を検証

 重力波観測のターゲットは天体現象だけではない。宇宙創生の謎を解き明かすため、初期宇宙で発生した「原始重力波」を探す試みが世界的に進んでいる。

 南米チリのアタカマ高地。標高約5千メートルの砂漠で、望遠鏡を使った「ポーラーベア」と呼ばれる観測が行われている。原始重力波の痕跡を世界に先駆けて検出しようという日米欧などの国際プロジェクトだ。

 宇宙は約138億年前の誕生直後、アメーバが一瞬で銀河サイズになるほどの急激な膨張を起こしたと考えられている。「インフレーション理論」と呼ばれる仮説で、佐藤勝彦自然科学研究機構長らが1980年代初頭に提唱した。観測で証明されればノーベル賞受賞の期待が大きい。

 残念ながら現代の地球で初期宇宙を直接見ることはできない。光が直進するようになったのは、宇宙誕生の38万年後に「宇宙の晴れ上がり」という現象が起きた後のことだからだ。このときの光は「宇宙背景放射」と呼ばれる。

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