iRONNA発

惑星有人探査 日本人が火星に降り立つ日 飛行士に求められる資質とは 村上祐資氏

 ◆「とどまる能力」

 南極では1年半の越冬経験を積んでいたが、そんな僕でも「彼らにはかなわないな」と思わされるような意識の違いを感じたことがある。それは、彼らがいつも火星を「水平線のすぐ先にある場所」としてとらえ、必ずたどり着ける場所だと信じていることである。

 だから、彼らは火星までのプロセスを、課題を解決し、消去していく道のり、つまりはっきりとゴールとして見据えている。僕ら日本人の多くは、火星に人が降り立つなんてことをリアルに感じてはいない。科学者だって、火星を「説明できる」だけにすぎない。日本人にとって、火星はまだ月のように身近な存在にはなっていない。残念だが、火星に「かぐや姫」はいないのである。

 では、火星飛行士に求められる資質とは何だろうか。それは、どんなことがあろうと「行きたい」と思い続ける能力だ。いかなる困難を前にしても前進することができるタフなやつ、「サバイバル能力」と言い換えてもいいだろう。

 僕自身も、これまでいくつかの選考を経験してきたが、選考する側が求める基準の一つに、このサバイバル能力であることが、選考試験で問われる項目の向こうにも透けて見えた。だが、ここに落とし穴がある。火星飛行士に必要な資質とは、実は前進する能力ではなく、そこに「とどまる能力」なのだ。

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