来日中のチベット亡命政府のロブサン・センゲ首相は9日、都内で産経新聞の取材に応じ、中国による開発でチベット高原の氷河の溶解が加速し「アジアの水源が深刻な危機にひんしている」と強調した。チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世が廃止の可能性に言及している輪廻(りんね)転生制度については「必ず存続される」との見方を示した。
センゲ首相はチベット自治区内の政治状況について「近年、中国政府は生体認証機能のあるIDカードの所持をチベット人に義務付け、移動の厳格な管理を通じて政治活動を制限している」と分析した。
また自治区成立から50年を迎えた昨年、中国政府が公表した「チベット白書」の中で「史上最も輝く黄金時代を迎えている」と主張したことに触れ、「チベットは中国にとって金の卵を産む黄金のガチョウにすぎない。資源を搾取し、政治的にはチベット人を差別している」と訴えた。
また、自治区では環境破壊も深刻化していると指摘。世界の氷河の約15%を擁するチベット高原周辺の氷河について「高原の気温が世界平均の2~3倍のペースで上昇し、氷河の消失が加速している」と述べ、その原因として地球全体の温暖化に加え、中国政府による現地でのインフラ整備や資源開発、人口流入などを挙げた。