人口減少時代には、輸血用の血液が足りなくなると予想される。江藤教授らの取り組みは、その対策として期待されている。
江藤教授らが設立したベンチャー企業「メガカリオン」などは、iPS細胞で作る血小板について、早ければ平成28年度中にも日本と米国で治験を始め、5~10年後に血液製剤の販売を始めることを目指している。細胞培養装置や冷凍庫などを備えた同社のクリーンルームはほぼ無菌状態に管理され、すでにiPS細胞から安全かつ大量に血小板を作る環境を整えているという。
個別化医療がもたらす絶大な効果
文部科学省が昨年12月に発表したiPS細胞による再生医療の実現に向けたロードマップでは、血液や軟骨、心筋、腎臓など約20の臓器・組織がリストアップされ、続々と臨床段階に入る見通しが示されている。
人間の皮膚や血液から作製でき、体中の臓器や組織に変化する能力を持つiPS細胞によって、かつては考えられなかった医療が現実になりつつある。iPS細胞の生みの親である同研究所長の山中伸弥教授は、「個別化医療」を目標のひとつに挙げている。