未来へ〜2016(4)

iPS細胞「夢の医療」の現実味 大量培養・保存…課題も

 文部科学省は昨年12月、人工多能性幹細胞(iPS細胞)による再生医療の実現に向けたロードマップを発表した。血液や軟骨、心筋、腎臓など約20の臓器・組織が臨床段階に入る見通しだ。「夢の医療」の現実味とは…。(前田武)

iPS細胞で大量生産された「輸血用血液」が救う生命

 《数十年後のある地方都市。若者の人口減少には歯止めがかからず、献血離れは一層加速している。駅前での献血の呼びかけに足を止める人はいない。だが、病院では毎日のように多くの手術が行われている。街の郊外にあるバイオ工場から定期的に運ばれてくる、iPS細胞を使って大量生産された「輸血用の血液」のおかげだ》

 《数日前に心臓手術を受けた高齢の男性も、その恩恵を受けた。男性はベンチでつぶやいた。「昔は輸血用の血液を献血で確保していたが今は必要ない。ありがたい時代になった」》

 これはiPS細胞が描き出す未来のひとつ。もちろん実現するまでにはまだ大きな距離があるが、決して絵空事ではない。

5~10年後に血液製剤の販売始まる?

 京都大iPS細胞研究所の江藤浩之教授らのグループは、iPS細胞から赤血球や血小板といった血液の成分を作る研究を進めている。

会員限定記事会員サービス詳細